「シュヴァルの理想宮」感想メモ

個人の感想です&いろいろ間違ってるかも&ネタバレ注意&全くレビュー見てないのですが既出とか似た意見あったらごめんなさい




主人公から視点があまり移動せず時系列も一直線なので行ったり来たり混乱することがなく見やすかった

それと山やら落ち葉やらの自然が美しかった 光の使い方好き



でもそういう美しい風景があっても外の自然風景を描き写したり直接交流したりするというような関わり方をするのではなくて、なんか周囲の世界との関わり方が間接的というか、そこにあるものを一旦自分のところに持ってきてイメージを膨らませて昇華させるという感じだった


私はこの映画をひとりの人間が世界との関わり方を模索する過程の物語だと思っていて、この人にとって最もいい関わり方が建築(創作活動)だったんだろうなと思う


まあそういう話だろうなとは見る前からなんとなくわかってた(から見た)んだけど、物語のはじめの20分間くらいで主人公の他人との関わり方の下手さや距離感がいつまでも掴めないようなキャラに個人的にめちゃくちゃ感情移入してしまった

郵便局のおじさんみたいな(名前忘れた)完全に理解してくれる人間にも心を開けず、パートナーが見つかっても自分の世界にこもりがち、家事もできない、だけど子どもとは建築の過程を通じて心を通わせることができたし子供も自分を完全に慕ってくれた(そこ以外の世界を知らないからここが最高だと思わざるを得ないしそれが親にとっても理想的な振る舞いだったというのもあると思うが)(そもそも失った娘との物語だからこういう展開にするしかなかったのかもしれない)(そんなこともないだろうけど…)

とにかく世界との関わり方が分からない(奥さんとの最後のシーンで彼自身が言っていたように)主人公にとっては宮殿を作ることが自分が生きやすくなるためのいちばんいい手段だったんだろうなと 絶望的な状況で自分を生かしてくれたライフワークでもあったし


最終的に宮殿が老若男女問わずさまざまな人の居場所になっていたのが一番グッときた 自分自身が他人とコミュニケーションできなくても自分が作ったものが代わりになってコミュニケーションしてくれるというか、その場にいなくても全く知らないような誰かを喜ばせたり安心させたりできるというのはすばらしいなと思った(人付き合い苦手な私にとってはかなりの希望だった…🥺) 


建築物だと壊されない限りその場に残り続けるし 自分が遠い国の建築物の絵葉書からもらったエネルギーが回り回ってまたどこかのだれかを引き寄せたりどこかに(こうやって映画にされるのもそう)伝わっていくという たったひとりでその場でやったことにもかかわらず時間的空間的なスケールの大きさがある

こういう一人で作る建築物ってセルフビルドって言うんじゃないかと思うんだけど(違ってたらごめんなさい) セルフビルドみたいな世界との関わり方があることを知ってるだけでなんか安心できるみたいなとこある それに作っている間は周りの噂話とか気にしなくていいもんね!

まあしかし仕事をとにかく一生懸命やることの素晴らしさは確かに描かれていた 郵便配達でも(1日32キロも歩いてたら妄想膨らませさなきゃやってらんないよなあ)セルフビルドでもなんでもいいけど だれも見てなくてもやるのが一番良い 世界を変えようとか記録を打ち立てようとかいうのではなく自己満足に見えたとしてもライフワークとして延々と続けるということの尊さよ…

映画の演出についてだと、奥さん(呼称が良くないけど奥さん以外の言葉が今思いつかない)と奥さんの友達との関係が良かった 冒頭で郵便局のおじいさんが男は子供の世話できないよね〜みたいなこと言ってておお…?と思ったけど、この人はそう言う考え方を持っているけど主人公には終始優しかったし、いろんな考え方やいろいろな関係性があるという(二項対立じゃない)人間の描かれ方がされているなと思った 主人公のオフィーリア的なシーンがあったのも良かった


明確な悪人らしい悪人がいなくて全体的に優しさが根底にあるのも好き それはこの主人公の世界や人間に対してする優しさが現れているのかもしれないという感じがする&見た後すごくいい気分になれる


アリスを喪った時に叫びながら川にダイブして無我夢中で川底の泥をかき分けるような動きをするところ(ちょっと真剣すぎて笑いそうになってしまった)、あれははじめの方の土の中から見知らぬ建築物の残骸?を掘り起こしてたシーンと呼応してるよね 大事なものはすべて土の中から出てくるし土の中に還るのだろうな…(今書いてて気づいた)!


あとは亡くなる直前?くらいに今まで会った人の言葉を目を閉じて思い出していたシーンも良かった すぐ応答できないだけで全部心に残っていたのだということがわかる そういう大事なことを留めておける彼だからこそあのような宮殿を作ることができるのだという コラージュ的に自分が良いと思ったものを組み合わせていくという行為があそこで叙情的に表現されている


なんか本当に全部のシーンが綺麗に接続されていってみていてわかりやすかった…いい映画だった シュヴァルの宮殿についてはネットでチラッと見ただけだったので今からいろいろ調べようと思う まだあるのであればいつか行ってみたいな